エピローグ 2
* システムの大半をMOTHERに割譲(かつじょう)していると、時間の感覚が薄くなる。ぼんやりとした――人間で言うなら、寝ぼけたような状態の中、μ(ミュウ)はうつらうつらとしながら、不思議な光景を眺めていた。 最初…
シンカナウスより-前編 ホワイトコード戦記シンカナウスより
エピローグ 1
ドリウス・シュタウツァーは傭兵だ。エントの高官に雇われた、というのは嘘ではない。シンカナウスの海洋観測基地で後ろにいた高官どもではなく、雇い主がエントの軍の上層部だった、というだけである。 気味の悪い挙動をする割にはやけに攻撃が弱気なアン…
シンカナウスより-前編 ホワイトコード戦記シンカナウスより
四章 そのコードの名前は-4
「魂とは、高密度のエネルギー記録型情報体……私はそう言いました。あそこでは詳しくは触れませんでしたが。情報は、我々がまだ正しい入出力方法を知らないだけの、一種のエネルギー型の記録かもしれません。そして、そこに行動プログラムが付与されることで…
シンカナウスより-前編 ホワイトコード戦記シンカナウスより
四章 そのコードの名前は-3
アンドロイドたち全員と合流し、研究施設に戻ってくると、もう夜になっていた。μ(ミュウ)は不思議な気持ちになった。昨日から怒濤の出来事の連続だった。丸一日の間にこれほどたくさんの出来事が起きたとは到底信じられないほどに。アンドロイドとして製…
シンカナウスより-前編 ホワイトコード戦記シンカナウスより
四章 そのコードの名前は-2
* μ(ミュウ)たちが這々(ほうほう)の体で沿岸部まで逃げてきたところで、そこは既に地獄と化していた。 α-TX3の初撃の破壊光線はここまで届いていた。常ならば、テレポート・ゲートエリアを通過してやってきた巨大流通船…
シンカナウスより-前編 ホワイトコード戦記シンカナウスより
四章 そのコードの名前は-1
巨大機兵たちが十の破壊光線を放とうと光を点した時、アンドロイドたちは咄嗟に動いていた。射線はμ(ミュウ)のおかげで避けられる。余波なら少しは耐えられる。ゆえに一刻も早く砲塔を破壊せんと、怒濤(どとう)の砲撃を浴びせた。【【このぉおおおおっ…
シンカナウスより-前編 ホワイトコード戦記シンカナウスより
三章 人形部隊(ドールズ)-3
【――にしてもさぁ、博士、何か考え込んでなかったぁ?】 世間話のように、目にかかった橙色の髪を払いつつ、β(ベータ)が口を尖らせた。【んんー、犯人の人物像が読めないからなぁ】δ(デルタ)が答える。【スパイが防空システムに入るって難しいんだよ…
シンカナウスより-前編 ホワイトコード戦記シンカナウスより
三章 人形部隊(ドールズ)-2
* サエレ基地は、エメレオたちが落ち合った場所からさらに南東へ進んだ都市郊外にある陸軍基地だ。海に面していたμたちの訓練施設である研究・生産区画とは対照的に、山陰に張りつくか、あるいは息を潜めるように存在していた。…
シンカナウスより-前編 ホワイトコード戦記シンカナウスより
三章 人形部隊(ドールズ)-1
「うわぁあああああああ!?」 エメレオ・ヴァーチンは端的に言って詰んでいた。 μ(ミュウ)をボコボコにしたと思(おぼ)しい傭兵男の鼻を明かしてやったと悦に浸る暇もなく、いるだろうと思っていた別働隊から予想外の強襲を受けていた。「MOTHER…
シンカナウスより-前編 ホワイトコード戦記シンカナウスより
二章 欠陥だらけの殺戮人形(キリングドール)-4
動揺も収まり切らぬまま、μ(ミュウ)はドリウスに向き合った。早く、彼を倒さなければ、エメレオの身が危ない。 だが――倒すということは、殺す、ということだ。後顧の憂いを絶つのならば、ここで仕留めなければならない。 やはり、決断の時なのだ――…
シンカナウスより-前編 ホワイトコード戦記シンカナウスより
二章 欠陥だらけの殺戮人形(キリングドール)-3
そして気づけば、μ(ミュウ)の目の前まで彼は肉薄していた。「っ!」 今までにない速さに、反応し切れなかった。(いや、違う) 即座に頭が否定した。(今まで、本気で動いていなかった――ッ!?) 腹に砲撃のような蹴りを受け、μはまともに吹き飛ん…
シンカナウスより-前編 ホワイトコード戦記シンカナウスより
二章 欠陥だらけの殺戮人形(キリングドール)-2
アンドロイドにもフレーバーとしての個性はある。しかし、μ(ミュウ)たちほど癖や個性を発現したアンドロイドは他にはいないと、施設の技師たちから聞いたことがある。警護任務に着くタイプのアンドロイドは何度か学習訓練で見たことがあるものの、これほ…
シンカナウスより-前編 ホワイトコード戦記シンカナウスより