シンカナウスより-前編

二章 欠陥だらけの殺戮人形(キリングドール)-1

 翌朝μ(ミュウ)がスリープモードから復帰すると、時刻は予定していたよりまだ早い時間だった。エメレオは既に起き出して、壁掛けのテレビジョン受信機のモニターに映し出された映像に見入っている。μはさて、とネットワークにアクセスして――自分のとこ…

一章 後ろ向きのアンドロイド-4

「――サンルーフ、開けます。外に出ますよ」「うん、よろしくね」 シートベルトを外し、開け放ったルーフの間からするりと伸び上がる。 向かい風に煽られ、ばたばたと、薄茶色の人工頭髪が視界の端で揺れた。不意に警告が頭を埋め、とっさに横にのけぞると…