二章 欠陥だらけの殺戮人形(キリングドール)-1
翌朝μ(ミュウ)がスリープモードから復帰すると、時刻は予定していたよりまだ早い時間だった。エメレオは既に起き出して、壁掛けのテレビジョン受信機のモニターに映し出された映像に見入っている。μはさて、とネットワークにアクセスして――自分のとこ…
シンカナウスより-前編 ホワイトコード戦記シンカナウスより
一章 後ろ向きのアンドロイド-5
「久しぶりだ、誰かとこうしてゆっくり食事をとるなんて」 皿の上の料理を機嫌よくつつきながら、エメレオははにかんだ。ワインもたっぷり飲んだあとなので、顔はほのかに紅潮している。「……よかったですね」 μ(ミュウ)は口の中にパンの欠片を押し込ん…
シンカナウスより-前編 ホワイトコード戦記シンカナウスより
一章 後ろ向きのアンドロイド-4
「――サンルーフ、開けます。外に出ますよ」「うん、よろしくね」 シートベルトを外し、開け放ったルーフの間からするりと伸び上がる。 向かい風に煽られ、ばたばたと、薄茶色の人工頭髪が視界の端で揺れた。不意に警告が頭を埋め、とっさに横にのけぞると…
シンカナウスより-前編 ホワイトコード戦記シンカナウスより
一章 後ろ向きのアンドロイド-3
振り向くと、セントラルルームの入り口に、人間の男が立っていた。足下からのMOTHERの光で顔がよく見えない。彼はこちらに向かって歩みを進めながら、流れるように語り出した。「もうひとつ疑問が生まれた。そんな壮大なプログラムと筋書きを作り上げ…
シンカナウスより-前編 ホワイトコード戦記シンカナウスより
一章 後ろ向きのアンドロイド-2
λ(ラムダ)と一緒に昼のエネルギー補給を行い(といっても日光ルームで昼寝をするだけなのだが)、模擬戦訓練をいくつかこなして、その日のルーチンは終了する。 λはTYPEが連番になっていることもあり、すっかりμ(ミュウ)の姉役を気取っている。…
シンカナウスより-前編 ホワイトコード戦記シンカナウスより
一章 後ろ向きのアンドロイド-1
――赤く暗い空を見ていた。焦熱がじりじりと体の表面を撫でていた。 崩れ去った都市。見上げるほどの瓦礫の山。足元で人々が折り重なるように倒れ、炎にまかれて苦しんでいるにも関わらず、生き残った者は茫然と己の頭上を見上げるしかなかっ…
シンカナウスより-前編 ホワイトコード戦記シンカナウスより
プロローグ
――なぜ自分だったのだろう、と数え切れないほど考えた。 他の誰かであればよかったのに、と何度も恐ろしさに逃げ出したくなった。 けれどきっと、幾度でもこう思い直すのだ。 それでも誰も自分からは逃げられない。この役目を例え誰かに譲れるとしても…
シンカナウスより-前編 ホワイトコード戦記シンカナウスより